制作のヒッチ

以土勝水

2016年01月25日 15:09


ワンカットで撮影された映画として知られる。
上映時間80分の長さの映画をワンカットで撮影するというのは、至難のワザ。
僅かなトチリも許されない門禁卡ことになる。
一つのセリフを噛んだりすると、最初から撮影を始めることになる。
舞台劇なら、少々間違っても人の記憶に残らないものだが、
何度も上映される映画では、完璧でなければならない。
ヒッチコック監督ならでは、というところだろう。
私の眼を魅いたのは最初の殺人のシーン。
殺人の興奮を抑えるために呑むシャンパン。
映画そのものより、そのシャンパンに注目してしまった。
それは黄色いラベルの”ヴーヴ・クリコ”。
これは、映画の中では脇役の小道具に過ぎないが、
私にとっては、このシャンパンに、いささか憧れがある。
というのは、
時々行っていた、ワインテイスティングのお店のカウンターの上に
黄色のケースが置かれているのを見て、
さすがに”物理補習おしゃれ”と感じた、
その感覚がいつまでも心の中に残ってしまっているせいだろう。

この”ヴーヴ・クリコ”という名称の”ヴーヴ”というのは、
「未亡人」という意味。
実際に夫に先立たれたクリコ夫人が、
その手腕を発揮して成長させた蔵元でもある。
この夫人、透き通ったシャンパンを作る”ルミアージュ”の技術を確立したり、
経営の才のある人物を登用したりと、
なかなかの女性だったようだ。
現在は、LVMH(ルイ・ヴィトン)グループの企業が製造・販売している。
そのせいか、様々なオシャレなアイテムも作られている。
映画の中では、殺人の興奮を鎮めるために呑んでいた”ヴーヴ・クリコ”、
シャンパンを口にした俳優が、つい、「うまい!」という表情をしようものなら、
ワンカッ河內自由行トの映画は、
また、最初から撮らねばならない。